ホメオパシーとは

ホメオパシーとは

ホメオパシー療法は、ドイツ人医師、Dr.クリスチャン・サミュエル・ハーネマンの重要な著作「医学病論」が出版された1810年にこれまでとはまったくことなる新しい医学体系として公式に成立しました。
「似たものが似たものを治す」という意味の、「Similia Similibus Curentur」という原理をベースにしており、病気を引き起こす“ある物質”の力は、「類は類を治す」という類似の現象を示しながら、病気の解決に利用できることを意味しています。
ホメオパシーでは、健康とは、心身の調和状態を維持しようとする機能的な作用であると考え、症状とは、感染症やストレスから身を守ろうとする身体の最大限の努力であるとしています。
このため、症状を抑圧・抑制するのではなく、むしろこのような防御プロセスの模倣を促進する物質を利用し、自身に備わる自己治癒力や自己調整力を有効活用し、最適な状態に導くことを目的とします。

ホメオパシーの利点

  • 1

    ホメオパシーレメディによる治療は、安全で無毒、自然の物質に基づいて作られています。原物質を極度に希釈しているため体に有害な影響はもたらさず、妊婦さんや授乳中の母親、小児、高齢者、猫や犬などのペットにも安全に使用できます。

  • 2

    レメディは微生物に直接作用するのではなく、人間本来が持っている自然治癒力を活用しますので、継続的に摂取しても微生物耐性のようなものの発生は確認されていません。

  • 3

    投与方法が簡単で強制的なところがなく、痛みをもとなう行為は一切ありません。口当たりも良いため、子どもたちにも非常に受け入れやすいのです。

  • 4

    病名の診断がなくても、ホメオパシー療法を開始する支障にはなりません。

  • 5

    お一人お一人の特性に合わせてアプローチするため、カスタマイズを希望する現代のニーズに一致しています。

  • 6

    ホメオパシーのレメディに中毒性はなく、問題が改善したら自分の意志で容易に中止できます。

  • 7

    ホメオパシー療法は他の代替療法と比べ、かなり費用対効果が高いとされています。

ホメオパシー療法の手法

使う道具

ホメオパシーで用いるのは、レメディ(Remedy)と呼ばれる小さな粒。語源はre(再び)、medy(癒す)からきています。直訳すると「家庭医薬」や「救済」などの意味があります。
この小さな粒を口の中でゆっくり溶かして摂取します。子どもたちはレメディという名のキャンディが大好きです。
この粒の他に、マザーティンクチャーと呼ばれる薬草酒(適切な比率でアルコール漬けされた薬効成分抽出液)を併用することで、肉体的な問題の緩和を図ります。

レメディの原料と製造方法

レメディは、自然界に存在するものを用いて作られ、大きく4~5種類に分類できます。これを粉砕したり溶解し、ホメオパシー的手法で砂糖粒に浸透させています。製造は、世界各地のホメオパシー薬局で厳格な手法で作られます。

※当相談室では、主にアメリカ、イギリス、インドなどで製造された原料を用いております。マザーティンクチャーは、特定の生産農場と契約した有機栽培のものを扱う信頼のおける企業から購入しています。

  • 植物系

    一般に使われるレメディの60%以上は植物由来です。キンセンカやカモミール、西洋オトギリソウ、トリカブトなど、薬効成分や有毒成分のある植物も多く原料に使われます。

  • 動物・昆虫系

    動物であれば、牛、豚、スカンクなど。昆虫であれば、蛇やハエ、ミツバチなど。基本的に健康体のものから採取した原料で作られます。

  • 生物学的素材

    DNAやウィルス、菌などの他に、ガンの病変組織や結石などを原料にしたものや、甲状腺やホルモンなど健康な組織からつくられるものもあります。

  • 化学的素材

    自然界の鉱物です。塩や硫黄、金(ゴールド)や水銀、アルミニウムなどがあります。
    エックス線やラジウム、プルトニウムなどの放射性物質もあります。

  • その他

    抗生物質や精神安定剤、ステロイド剤、抗がん剤やワクチンなど薬物療法で用いる薬品の他に、月の光や日光、雷などの光線、チョコレートやショ糖などもあります。

似たものが似たものを治す

ホメオパシー療法は「似たものが似たものを治す」、つまり健康な人に与えてある症状を出す物質は、同じような病気の症状を治すことができる、というホメオパシーの基本原理から成り立ちます。

これは「同種の法則」として知られているものですが、何も新しい原理や未知の原理ではありません。西洋医学の父、ヒポクラテスの文書や、古代インド医学にもそういった記述を見つけることができます。

医薬品が製造されるずっと前から、人間は身近にある薬草を用いて病気を治療していました。

たとえば、ベラドーナ(西洋ハシリドコロ)という植物は、しょうこう熱の特効薬だと言われていますが、それはベラドーナ中毒の症状がしょうこう熱の症状と類似しているからです。どちらも、肌が焼けるように感じられる、瞳孔が開いて目が輝く、喉が乾燥して痛む、興奮し譫妄が起こるといった症状を持ちます。

他の例では、タマネギの皮を剥くと目と鼻に焼けるような感覚を起こし、水っぽい分泌物が出ます。風邪をひき同様に水っぽく焼けるような目と鼻の感覚に苦しんでいるときに、赤タマネギから調製したレメディ(All-cアリウムシーパ)を取ることによって解決を促すことができます。

ポーテンシー化について

自然界には致命的な毒を含む有毒物質もたくさんあります。ハーネマンはこれら自然界に存在する物質を極度に薄めることによって、より成果が上がることを発見しました。ホメオパシー療法では、レメディの希釈率を「ポーテンシー」という言葉で表現します。
植物や動物、鉱物などの材料をアルコールなどの適切な溶媒から抽出し、振盪と摩擦を加えて調製します。実際には、薄めた物質をたたいて振動を与えることで、その物質の持つエネルギーを活性化すると言われています。
ポーテンシーの希釈割合は、10分の一比率(1:10)、100分の一比率(1:100)などです。
化学の用語では10-1と書く10分の一希釈を、ホメオパシーでは1Xと言います。さらに薄めた100分の一希釈(10-2)を1Cと言い、セルフケアで主に使用されるのは30C(10-60)です。
24Xまたは12Cより薄まれば、どんな希釈液でもアボガドロの限界を超えてしまうので、いかなる物質であれ、そこから先の希釈液に分子が一個でも含まれる可能性は低いわけです。

今の医学者や化学者の常識では、このような希釈液は溶剤のアルコールと水の混合液と何ら変わらないわけで、ホメオパシーが非科学的だと言われる所以でもあります。しかし、これは「常識」による議論であり、希釈度の高い物質に強い効力があるかもしれないという可能性を否定するだけの証拠は、ホメオパシー否定論者から示されておりません。

ホメオパシー従事者が求めているのは、常識的な憶測ではなく、臨床的な事実によって得られた結果であるということなのです。

ホメオパシーが安全な理由

きわめて薄い希釈率でも
自然治癒力の活動を発動

250年もの長い歴史があるにもかかわらず、ホメオパシーが全く新しい医療体系として位置付けられている最大の理由は、その「希釈率」にあります。
原材料に有毒植物や昆虫毒、病原菌などを用いますが、きわめて薄めて用います。その希釈率は太陽系に涙を1滴落とすくらいという天文学的な度合いです。そして、これを砂糖にしみ込ませたものが「レメディ」と呼ばれるホメオパシーで使うアイテムになります。
たとえ最初に用いた材料は有毒植物であっても、その分子が入らないほど薄めますので、原液の物質は分子レベルで分析しても検出できません。成分的には砂糖以外の物質は何も検出されないのです。このため毒のような物質作用的な力はありません。物質はなくともそのパターンのようなものが残っているため、体内の症状に共鳴し自然治癒力の活動を発動させるのだろうと推測されています。
19世紀には多くの医師がホメオパシーを試し、その治療効果は彼らを驚かせ感銘すら与えました。しかし、特に20世紀前半には製薬会社の躍進や医療のビジネス化などにより、ホメオパシーはわきに追いやられる結果になっています。
今の科学では超微量に希釈されたものが心身に影響を与える理由が説明できず、ホメオパシーの賛否には議論があります。プラセボ(偽薬)効果だという人や、インチキ行為だという人もいます。
唯物主義の現代医学(薬物療法)の理論家にとって、いまだに生き残っているホメオパシーの存在は苦々しい限りに違いありません。しかし、ホメオパシーを実際に用いると、この私たちを取り巻く天と地の間には、唯物主義では夢想だにできないことが起こるのだということを思い知らされます。
世界中でアニマルホメオパスと呼ばれる獣医たちが、動物の治療にホメオパシーを利用しています。彼らには偽薬効果は通用しません。
自然分娩の大家であるフランス人医師、ミシェル・オダン氏はホメオパシー療法を妊産婦の健康管理や分娩に取り入れています。胎児や新生児の健やかな成長発達にも大きく貢献しています。

ホメオパシーの適応範囲

ホメオパシーは長い歴史の中でさまざまな健康問題に利用されてきました。
人間は一人一人が個別の存在なので、人々が生きるありようはすべて個別なものであり、抱えている健康問題も(たとえ病名が同じであっても)お一人お一人個別性があります。
このためカスタマイズされたホメオパシーのアプローチは非常に評価が高く、クライアントの満足を充足させるものです。
2014年、インド政府はホメオパシーなどの伝統的な療法を重視しAYUSH省を確立しました。

※インドでは、マハトマ・ガンジーが積極的に支持した流れを受け継いで、現代のホメオパシー療法の中心地となっています。今日ホメオパシー医の数は世界最大であり、現代医学とともに正当な治療として確立しています。(→世界のホメオパシー参照)

これに対して、日本を含む諸外国ではホメオパシーは医療行為ではありません。
極度に希釈した物質が心身に作用するという科学的な証明もなされていません。

しかしながら、みなさまの参考までに、AYUSH省の出版物「ホメオパシー科学――穏やかな治療法――」から以下を抜粋します。

長年にわたり、ホメオパシーのレメディはさまざまな症状に使用され、改善してきた。例えば、消化酸性疾患、不安、アトピー性皮膚炎、自閉症、行動障害、骨折の治癒、結膜炎、水痘、うつ病、月経困難症、頭痛、帯状疱疹、インフルエンザ、ケガ、月経不順、月経前症候群、乾癬、心身症、恐怖症、腎結石、ストレス障害、薬物乱用、上気道感染症、白斑、妊娠・授乳期に共通する苦痛、授乳、下痢、疝痛、子どもの歯並びの問題などである。

デリーのホメオパシー薬局に通っている約1.1万人の患者データによる分析では、このような症状が治療カウンセリングに来る最も多い理由である。

ホメオパシーはまた、癌やHIV/AIDS、末期の病気などにも症状の改善、生活の質を向上させるケアなどにも使用される。

臨床調査では、急性中耳炎、注意欠陥多動障害、自閉症、行動障害、良性前立腺肥大症、頚椎症、慢性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患、前臨床甲状腺機能低下症、HIV感染症、日本脳炎、学習障害、更年期障害、断薬に関連した病訴、卵巣嚢腫、疥癬、上気道感染症、尿路結石症、いぼなどさまざまな臨床症状を発表している。

(AYUSH省「ホメオパシー科学――穏やかな治療法――」より抜粋)

ホメオパシーの限界

万人に必ず効く治療法は
ありえない

この地球上に「万人に必ず効く」というもの治療法はありえません。いかに科学的なものであれ、いかに洗練されたものであれ、どんな治療法であっても太刀打ちできない分野はあります。ホメオパシー療法では、外科手術の代用にはなりませんし、ホルモンの補充はできません。事故やケガでパックリ傷口が開いているのであれば外科で縫合するのがベストですし、呼吸が止まっているならば、気管切開をし人工呼吸器を装着する必要があります。甲状腺全摘出術を受けて甲状腺ホルモンが分泌できないならばチラージンを服用することでホルモンを補充せねばなりません。そして、もはや自然治癒力によって心身のバランスを調整するなどという状況ではない重度の場合には、その苦痛の緩和が目的とされるはずです。ご本人のみならずご家族が、医師などの有資格者の専門家に相談することが必要と判断した場合には、積極的にそれを実行しましょう。当相談室では、かかりつけ医を受診し、血液検査やレントゲン検査、エコーやCTなどの精密検査を推奨しています。

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