健康コラム

2023.09.20

小児アトピーとホメオパシー

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イタリアのホメオパシー病院で、10年にわたりホメオパシー治療を受けたアトピーの子どもの追跡研究の資料はとても興味深いものでしたので、ここで概要を記します。

アトピーの語源

もともとアトピー「atopy」という言葉は、1923年にコカ (Arthur F. Coca) とクック (Robert A. Cooke) という学者がつくった造語です。接頭語の「a=不特定」とギリシア語の「topos=場所」からきており、「e=異なる、普通ではない、場違い」を意味します。アトピーの歴史は、もともと喘息とアレルギー性鼻炎だけでしたが、1933年にアトピー性皮膚炎もアトピー(アトピー性疾患)のグループに含まれ、医学予後として位置づけられました。
日本では、アトピーと言えばまず皮膚炎を意味することが多いのですが、もともとは喘息と鼻炎症状を指していたということ、そして遺伝的傾向を持った人に現れる即時型アレルギーだと理解されています。
昭和後半以降、アトピーは増加の一途で、たいていは皮膚症状から始まり、消化器系の食物アレルギー、続いて鼻炎や喘息などの呼吸器疾患へと症状が発展していきます。
表面に生じていた健康トラブルが、どんどん内臓に奥深く進行していく厄介な疾患で、病気のステップとして、皮膚→胃腸→気管支や肺 と広範囲に進行していくので「アレルギーマーチ」とも呼ばれます。

研究内容

2011年に受理されたこの研究は「小児アトピー性疾患におけるホメオパシー」Homeopathy in paediatric atopic diseasesと題されています。
1988年9月~2008年12月までのアトピーの子ども551人のうち、213人(39%)を対象にして行ったというもので、小児期にホメオパシー療法を受けた子どもたちは、成人になってからアトピー性皮膚炎や喘息が持続することが少なくなったというのです。

アトピー性湿疹の子どもたちは、随伴症状としてさまざまなアレルギー症状を持つことが知られていますが、この研究では39%(83人)が気管支喘息、24%(51人)がアレルギー性鼻炎、36%(76人)が注意欠陥障害、1%(3人)が食物アレルギーとのことでした。代替医療が普及している諸外国では、特にアメリカは小児期のアトピー治療に代替療法を使用する割合は40%と、薬物療法よりも高いということが記されていました。イタリア(トスカーナ地方)では、25%が薬物療法を取り入れ、加えてそのうちの約24%がホメオパシー製品(ホメオパシ軟膏ほか)を併用しているそうです。ステロイドに代用可能なアイテムを望んでいる保護者の方は万国共通のようで、これは私としては興味深い内容でした。

この研究症例では、多くの子どもは9歳以下でホメオパシー療法を開始し、追跡調査をしながらアトピー性皮膚炎の長期治療におけるホメオパシーの有効性を、そしてそのような治療によって鼻炎や喘息の進行にどう影響を与えたかを確認しました。

診断基準

研究時に分類上利用された、アトピー性皮膚炎の診断基準を参考に紹介します。仮に診断がついていない方であっても、ご自身のお子さまのアトピー傾向の参考にもなるかと思います。

  1. 皮膚症状(とくに、腕、手首、膝、足首の付け根、首、耳、耳の後ろ)、とくに10歳以下の子どもでは頬の皮膚トラブルも含む
  2. 喘息または花粉症の既往歴(4歳以下の子どもでは両親のアトピー歴)
  3. 過去1年間の乾燥肌
  4. 2歳以下で発症した症状とその兆候
  5. 屈曲する部位の慢性的な皮膚炎(4歳未満はおでこや頬、四肢の外側の湿疹含む)

さらに、アトピーの症状について、重症化基準を設けました。

  1. アトピーなし:正常な皮膚、活動しているアトピー兆候はなし
  2. 軽度アトピー:皮膚は局所的に乾燥しており、散在的にかゆみを生じていたり、赤い小発疹を伴う
  3. 中等度:皮膚の乾燥が強く、かゆみや発赤が繰り返し起こる。皮膚には掻き壊しがみられ、また掻く皮膚が部分的に肥厚していたりゴワゴワしている。
  4. 重症アトピー:広範囲に皮膚が乾燥し、絶え間なくかゆみが持続する。掻き壊しに関係なく、広範囲に皮膚は肥厚し、時に出血や亀裂による痛み、色素沈着を伴う。

喘息も、季節の変化で発症する軽症喘息から、それが持続するものを中等度、常に持続する重症喘息に分類されました。

結果

アトピー性疾患では、皮膚疾患が喘息などの呼吸器アレルギーに進行するケースが多いが、ホメオパシー療法の介入によって、この現象は減少する。さらに、ホメオパシークリニックで治療を実施したにもかかわらず皮膚炎や喘息が残る患者の場合も、数年かけて発症するこれらの症状は軽かった。

アトピーの40%は年齢が上がるにつれてアレルギー性鼻炎を発症し、34%は喘息を発症したが、ぜんそく発症患者の54%が軽症で重症喘息は11%だった。

まとめ

アトピー性疾患で悩む患者に対して、特に小児期にホメオパシー治療を受けた場合は、症状の進行をやわらげます。とくに、アトピー性皮膚炎、喘息。さらに小児以降に発症する慢性皮膚炎の発症率も下がります。成人期以降も持続するアトピー性皮膚炎や喘息、鼻炎やアレルギー性結膜炎を発症する傾向も低下します。
将来にわたる長期的な健康を手に入れるために役立つ療法であるといえるでしょう。

※日本においてホメオパシー療法は医療ではありません。ご紹介した内容はあくまでも個人的な教育目的で使用してください。

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